Bean to Bar チョコレートとは?専門店が教える魅力と楽しみ方

はじめに

「カカオ豆から板チョコまでを一貫して手づくりする」—— Bean to Bar という言葉を聞いたことはありますか?今、世界のチョコレートシーンで注目を集めているキーワードです。

でも、「クラフトって普通のチョコと何が違うの?」「本当においしいの?」と思う方も多いですよね。そこで、専門店 ジャラク コーヒー&カカオ が、Bean to Bar の基本から日本で人気が高まる理由、そして家庭での楽しみ方まで、わかりやすく解説します。

この記事を読み終わる頃には、きっと一枚の板チョコに込められた"作り手の想い"を感じられるようになっているはずです。

最近、食べ物の世界では「どこで作られたか」「誰が作ったか」がとても重視されるようになりました。消費者は単に商品を買うだけでなく、その背景にあるストーリーや価値観を大切にするようになっています。チョコレートの世界も例外ではありません。

大量生産される同じような味から、個性豊かで作り手の想いが込められた手作りの味へ。この変化は、私たちの価値観の変化と深く関係しています。

Bean to Bar の魅力は、おいしいチョコレートを作ることだけではありません。カカオ農家との直接取引による適正な価格設定、環境に優しい持続可能な農業の推進、地域コミュニティの活性化など、社会的な意義も注目されています。一枚のチョコレートの向こう側に見える、生産者から消費者までの長いストーリーこそが、Bean to Bar の真の価値なのです。

 


 

1 Bean to Bar を簡単に説明すると

普通のチョコレートとの違い

普通のチョコレートは、大手メーカーが加工済みの「クーベルチュール」という材料を仕入れて、それを溶かして型に流し込むだけ。つまり、素材がどこから来たのかが見えにくいんです。

一方、Bean to Bar は違います。カカオ豆の買い付けから選別、焙煎、すりつぶし、練り上げ、温度調整、成形まで、すべての工程を一つの工房で行います。その結果、豆の産地や発酵方法、焙煎温度のわずかな違いまで味に表れ、ワインやウイスキーのような産地の個性(テロワール)が楽しめるのです。

一貫生産がもたらす価値

この「一貫生産」というアプローチは、チョコレート作りの根本的な発想の転換を意味します。従来の工業的な製造では、効率性と均一性が最優先され、カカオ豆の個性は意図的に標準化されてきました。Bean to Bar は、この失われた個性を復活させることを目指しています。

カカオ豆の選別では、一粒一粒の状態を確認し、発酵がうまくいかなかった豆や虫に食われた豆を手作業で取り除きます。焙煎では、豆の特性に合わせて温度と時間を細かく調整します。例えば、酸味の強いエクアドル産のカカオは低温でゆっくり焙煎することで、酸味を和らげてフルーティーな香りを引き出せます。

すりつぶしと練り上げの工程では、目指す味に応じて時間を調整し、最適な粒子の大きさと香りの発達を追求します。最後の温度調整(テンパリング)は、チョコレートの食感と見た目を決める重要な工程で、熟練した職人の技術が最も必要な部分です。

これらすべての工程を一つの工房で管理することで、Bean to Bar チョコレートは、カカオ豆が持つ本来の力を最大限に引き出し、産地の風土を反映した唯一無二の味わいを生み出すのです。

 


 

2 なぜ世界で注目されているの?

ポートランドから始まった革命

2000年代初頭、アメリカのポートランドにある小さな工房から始まったムーブメントは、わずか20年で数十か国に広がりました。大量生産の甘いチョコに飽きた人々が、**「素材本来の味」と「作り手の顔が見える安心感」**を求めたからです。

日本でも2014年頃から専門店が続々と誕生し、カカオの産地名が書かれた板チョコが百貨店のバレンタイン売り場を賑わせるようになりました。"嗜好品"から"クラフトフード"へ——それがBean to Barの現在地です。

消費者の価値観の変化

このムーブメントの発祥地であるポートランドは、クラフトビールやサードウェーブコーヒーの聖地としても有名で、「手作り」「こだわり」「地産地消」といった価値観が根強い場所でした。2007年に兄弟が立ち上げた「Mast Brothers Chocolate」は、カカオ豆の調達から板チョコの完成まで、すべてを自分たちの手で行う製法で話題になりました。

このムーブメントが世界的に広まった背景には、食の安全性への関心の高まりがあります。添加物や保存料への不安から、消費者は「シンプルで自然な食品」を求めるようになりました。Bean to Bar チョコレートの「カカオ豆と砂糖だけ」というシンプルな材料は、まさにこのニーズに応えるものでした。

また、グローバル化が進む中で「地域らしさ」を大切にしたいという気持ちも大きな要因です。大手企業が提供する均一化された商品ではなく、地域の特色を活かした個性的な商品への需要が高まりました。Bean to Bar チョコレートは、カカオの産地ごとの特徴を活かすことで、「世界の多様性」を味覚で体験できる商品として受け入れられたのです。

日本での広まり

日本でのBean to Bar の広まりは、2016年の「ダンデライオン・チョコレート」の上陸が大きな転換点でした。サンフランシスコ発のこのブランドは、東京の蔵前にファクトリー併設の店舗をオープンし、製造工程を見学できる仕組みを導入しました。この透明性の高いアプローチは、日本の消費者にBean to Bar の魅力をわかりやすく伝える役割を果たしました。

その後、国産Bean to Bar ブランドが次々と誕生し、それぞれ独自のアプローチでカカオと向き合い、日本人の味覚に合った商品を開発しています。近年では、百貨店のバレンタイン商戦でBean to Bar チョコレートが大きな存在感を示すようになり、従来の「ブランド重視」から「味重視」へと消費者の志向が変化しています。

 


 

3 ジャラクのBean to Bar——インドネシア産カカオへのこだわり

インドネシアという産地の魅力

ジャラクは、13,000もの島々を抱くインドネシアに注目しました。火山灰の土壌が育むカカオは苦味が穏やかでフルーティーな特徴があります。そこで現地農家と直接契約し、フェアトレード価格で高品質なロットだけを買い付けています。

豆は日本到着後30日以内に焙煎し、砂糖は素焚糖か椰子花蜜のみを使用。乳化剤・香料・植物油脂は一切加えず、**「カカオ+砂糖=2つの素材だけ」**に全力で取り組んでいます。

なぜインドネシアなのか

インドネシアがカカオの産地として注目される理由は、その地理的・気候的な特性にあります。赤道をまたぐ位置にあり、年間を通じて高温多湿な熱帯性気候は、カカオの栽培に理想的な環境を提供します。また、多くの島が火山島であるため、火山灰由来の肥沃な土壌がカカオの木に豊富な栄養を供給し、独特の風味を持つカカオ豆を育てています。

農家との長期パートナーシップ

ジャラクが特に大切にしているのは、カカオ農家との長期的なパートナーシップです。一般的な取引では、カカオ豆は国際市場価格で売買されますが、この価格は変動が激しく、農家の収入が不安定になりがちです。ジャラクでは、品質に応じた適正価格を設定し、農家が安定した経営を続けられるよう支援しています。

発酵工程への技術支援も重要な取り組みの一つです。カカオ豆の発酵は、チョコレートの風味を作る上で最も大切な工程の一つですが、適切な技術と設備を持たない農家では、十分な発酵ができていないことがあります。ジャラクでは、現地の農家に発酵技術を指導し、必要に応じて発酵施設の改善費用を支援することで、品質の向上を図っています。

日本での品質管理

日本到着後の処理についても、鮮度を最重視した体制を作っています。カカオ豆は農産物なので、時間が経つと風味が落ちてしまいます。そのため、到着後30日以内の焙煎を必須としています。また、焙煎前には再度、手作業で選別を行い、品質をチェックします。

砂糖の選択にも、ジャラクのこだわりが表れています。一般的な白砂糖ではなく、奄美大島産の素焚糖やインドネシア産の椰子花蜜糖を使うことで、カカオの風味を邪魔することなく、自然な甘味を加えています。添加物を一切使わないというポリシーも重要な特徴で、製造は難しくなりますが、カカオと砂糖だけでチョコレートを作ることで、原料の持つ力を最大限に引き出しています。

 


 

4 五感で味わう楽しみ方

基本のテイスティング方法

1枚20gの板チョコを室温22℃に10分置いてから、まずは割ってみましょう。パキッと高い音がすれば、温度調整(テンパリング)がうまくいっている証拠です。

続いて、割った断面を鼻に近づけて深呼吸してみてください。焙煎の香りの奥に、柑橘や花のような香りを感じられるでしょう。最後に舌の上でゆっくり溶かすと、最初に酸味、次に果実味、最後にビターキャラメルの余韻が現れます。

**「味のグラデーションを追いかける30秒」**が、Bean to Bar最大の醍醐味です。

テイスティング環境の準備

Bean to Bar チョコレートのテイスティングは、ワインの試飲に匹敵する奥深い体験です。この体験を最大化するためには、適切な環境作りと段階的なアプローチが大切になります。

まず、テイスティング環境を整えましょう。室温は20-22℃が理想的で、湿度は50-60%程度に保つのがベストです。チョコレートは温度に敏感で、冷たすぎると香りが立たず、暖かすぎると溶けすぎて食感が損なわれます。

視覚・聴覚で楽しむ

見た目の観察は、テイスティングの第一段階です。Bean to Bar チョコレートは、適切に温度調整されていれば、美しい光沢を持ち、表面に白い粉(ブルーム)が浮いていないはずです。色合いも重要な情報で、明るい茶色はカカオ含有率が低めか焙煎が浅いことを、濃い茶色は高いカカオ含有率か深い焙煎を示しています。

チョコレートを割る音は、品質の大切な指標です。適切に温度調整されたチョコレートは、「パキッ」という明瞭で高い音を立てて割れます。この音は、カカオバターが正しい結晶の形になっている証拠で、理想的な食感と風味の広がりが期待できます。

香りを楽しむコツ

香りの分析では、まず割ったばかりのチョコレートを鼻に近づけ、第一印象を記録します。その後、手の温度で軽く温めながら、時間とともに変化する香りを観察します。Bean to Bar チョコレートからは、焙煎香を基調として、フルーツ系、花系、スパイス系、ナッツ系など、多様な香り成分を感じることができます。

味の変化を追いかける

味の分析では、チョコレートを舌の上に置き、噛まずにゆっくりと溶かしながら味の変化を追いかけます。最初の数秒で感じる「アタック」では、酸味や苦味の強さ、甘味のバランスをチェックします。中間段階の「ミドル」では、果実味やナッツ味、スパイス感などの複雑な風味が現れます。最後の「フィニッシュ」では、余韻の長さと質を観察します。

産地による違いを知る

産地別の特徴を理解することで、テイスティングはより深い体験となります。例えば、エクアドル産のカカオは明るい酸味と花のような香りが特徴的で、マダガスカル産は果実味と軽やかな酸味、ベネズエラ産はナッツやキャラメルのような深い風味を持つことが多いです。

このような丁寧なテイスティングを通じて、Bean to Bar チョコレートの持つ豊かな世界を探求することは、単なる嗜好品の消費を超えた、文化的で知的な体験となるのです。

 


 

5 おすすめ商品とギフト提案

商品ラインナップ

商品名

内容量

テイスティングノート

価格

URL

ジャラクガナッシュ(生チョコ)

8個入り

なめらか×濃厚カカオ

¥1,960

https://jalak-yumex.net/collections/chocolate/products/1004

ボンボンショコラ 6個入り

6個入り

フルーツ×ナッツ×紅茶の個性派

¥2,760

https://jalak-yumex.net/collections/chocolate/products/%E3%83%9C%E3%83%B3%E3%83%9C%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%82%B3%E3%83%A9-6%E5%80%8B%E5%85%A5%E3%82%8A

それぞれの特徴

ジャラクガナッシュ(生チョコ)

ジャラクのBean to Barチョコレートを贅沢に使った、なめらかな口どけのガナッシュ。インドネシア産カカオ豆を丁寧に焙煎・精製し、そこに生クリームとバターを加えることで、リッチでやさしい味わいに仕上げています。手土産や贈り物にぴったりなサイズ感で、冷蔵で届くため、ひんやりとした食感も楽しめます。

ボンボンショコラ 6個入り

6つの異なる味が楽しめる、華やかな一粒チョコレートの詰め合わせ。ベリーの酸味が爽やかな【アムール】、沖縄の塩が香る【塩キャラメル】、香ばしい【アーモンドキャラメル】、人気の【ピスタチオ】など、色・香り・食感が一粒ずつ異なります。見た目にも美しいチョコレートは、特別なギフトにぴったり。インドネシア産カカオの奥深さと素材の妙が詰まった逸品です。

6 まとめ

Bean to Bar の本当の価値

Bean to Bar は、チョコレート界のクラフトビールとも言える存在です。産地ごとの個性をダイレクトに感じられ、作り手の哲学まで味わいに込められている——そんな唯一無二の体験を、まずは1枚から始めてみませんか。

Bean to Bar チョコレートの魅力は、単においしいチョコレートを提供することにとどまりません。それは、現代社会における食文化の新しい可能性を示す、文化的な現象でもあります。大量生産・大量消費の時代から、質と個性を重視する時代への転換点において、Bean to Bar は重要な役割を果たしているのです。

透明性と持続可能性

この製法が提供する最も大切な価値の一つは、「どこから来たかがわかること(トレーサビリティ)」です。一枚のチョコレートから、そのカカオがどこで誰によって栽培され、どのような過程を経て手元に届いたかを知ることができる透明性は、食の安全性が重視される現代において、とても重要な意味を持ちます。

環境と社会への配慮という点でも、Bean to Bar は先進的な取り組みを行っています。多くのBean to Bar メーカーが採用する直接取引やフェアトレードは、カカオ農家の生活向上に直接貢献し、持続可能な農業の推進を支援しています。

味覚体験としてのBean to Bar は、私たちの感覚を研ぎ澄まし、食べ物との向き合い方を変える力を持っています。一枚のチョコレートをゆっくりと味わう時間は、忙しい日常から一歩離れて、自分自身と向き合う貴重な機会となります。

無限の可能性を秘めた世界

Bean to Bar の世界は、まだ発展途上にあり、今後も新しい発見や革新が続くと予想されます。新しいカカオ品種の発見、発酵技術の改良、新しい産地の開拓など、可能性は無限大です。このダイナミックな変化の過程に参加することで、食文化の最前線を体験することができるのです。

一枚のチョコレートから始まる新しい体験

Bean to Bar チョコレートとの出会いは、単なる新しい嗜好品との出会いではありません。それは、食べ物との新しい関係性を築き、世界との新しいつながり方を発見し、そして自分自身の感覚と価値観を見つめ直す機会なのです。ぜひ、一枚のチョコレートから始まるこの豊かな世界を、実際に体験してみてください。

 


 

商品一覧を見る https://jalak-yumex.net/collections/chocolate

 


 

使用したデータソースについて

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データソース

URL

1

FCIA Fine Chocolate Glossary「Chocolate, Bean to Bar」

https://chocolateglossary.com/chocolate-entries/chocolate-bean-to-bar-2/

2

Mast Brothers – Wikipedia(創業年 2007 年)

https://en.wikipedia.org/wiki/Mast_Brothers

3

Dandelion Chocolate Blog「The Story of Dandelion Chocolate Japan」

https://blog.dandelionchocolate.com/2019/06/28/story-dandelion-chocolate-japan-shops-culture-secret-ingredient-japans-hot-chocolate/

4

ICCO「Quarterly Bulletin of Cocoa Statistics」

https://www.icco.org/icco-documentation/quarterly-bulletin-of-cocoa-statistics/

5

World Population Review「Cocoa Producing Countries 2025」

https://worldpopulationreview.com/country-rankings/cocoa-producing-countries

6

Minimal - Bean to Bar Chocolate「2025 年バレンタイン催事出店情報」

https://mini-mal.tokyo/blogs/information/204389

7

Hill Country Chocolate Blog「The Science Of Taste: Enhancing Your Chocolate Tasting Skills」

https://www.hillcountrychocolate.com/blogs/news/enhancing-your-chocolate-tasting-skills