コーヒー豆とカカオ豆、何が似ている?香り高い嗜好品の共通点
はじめに|豆同士がたどる“似た旅路”
朝の一杯のコーヒーに心がほどける瞬間や、チョコレートをひとかけら口にしたときに広がる幸せ。そのどちらも、実は同じような旅路をたどって私たちの手元に届いているのをご存じでしょうか。コーヒー豆もカカオ豆も、赤道に近い熱帯で育ち、発酵や乾燥を経て、最後に焙煎という仕上げで香りをまといます。 まるで兄弟のように似たプロセスを通して生まれるからこそ、私たちはその奥深さに魅了されるのです。この記事では、コーヒー好きの方なら「なるほど」と思える共通点をひも解きながら、チョコレートの楽しみ方にも新しい発見を加えていきます。きっと、次の一口や一杯がもっと特別に感じられるはずです。
栽培環境の類似点|どちらも“熱帯の恵み”で個性が決まる
赤道のベルトが育む香り
コーヒー豆もカカオ豆も、いずれも熱帯のベルトと呼ばれる赤道付近で育ちます。カカオは北緯10度から南緯10度の限られた地域が主産地で、年間を通じて高温多湿な気候が欠かせません。一方、コーヒーは赤道をはさむ両回帰線の間で栽培され、こちらも日射量が豊富で雨が多い環境が適しています。つまり、どちらの豆も「強い太陽と豊かな雨」という自然の恵みを受けてこそ、あの香り高い味わいが形づくられるのです。
標高が左右する“きめ細かさ”
栽培地の標高は、風味に大きな影響を与えます。コーヒー豆、とくにアラビカ種は標高が高い場所で育つほど、昼夜の寒暖差によって実がゆっくり熟し、酸味が際立つ洗練された味に仕上がります。反対に、低標高のカカオは高地のような冷涼さこそありませんが、温暖な環境で安定的に育ちやすく、発酵や品種の違いによって豊かな個性が生まれます。誤解されがちですが、カカオは必ずしも高地でなくても高品質になるのが特徴で、むしろ適切な気候と発酵管理こそが香りを決める鍵になります。
品種×産地=テロワールの方程式
どちらの豆も、品種と産地の組み合わせ=テロワールが風味の決め手です。コーヒーではエチオピア産のフローラルな香り、ケニア産の鮮烈な酸味などが知られています。カカオも同じで、例えばマダガスカル産は果実味が豊か、エクアドル産はフローラルな香り、と地域による特徴がはっきり現れます。つまり「どこで、どのように育ったか」がそのまま味に映し出されるのです。赤道の自然環境と人の手による管理、この二つのバランスこそが、コーヒーとチョコレートに共通する奥深さといえるでしょう。
発酵が風味の“設計図”を描く|微生物のリレーが要
酵母から始まる“三段リレー”
カカオ豆がチョコレートになるまでに欠かせないのが発酵です。収穫したカカオの果肉を自然に置くと、まず酵母が糖を分解してアルコールを生み出します。続いて乳酸菌が酸をつくり、最後に酢酸菌がアルコールを酢酸に変えていきます。この酵母→乳酸菌→酢酸菌というバトンの受け渡しが、香りの“下絵”を描く重要なステップなのです。発酵中は温度が45〜50℃ほどまで上がり、豆の内部で香味の前駆体がじわじわと形成されます。これが、後の焙煎で香りや味わいとして開花します。
コーヒーにも欠かせない“発酵の場”
コーヒーも同じく、工程のどこかで必ず発酵が起きる飲み物です。ウォッシュトと呼ばれる精製方法では、水槽の中で果肉を取り除いた豆が数十時間発酵し、すっきりとした風味が生まれます。ナチュラル製法では果肉をつけたまま乾燥させ、その間に自然な発酵が進行し、果実味豊かな味わいが残ります。つまり、カカオもコーヒーも「どんな発酵を経たか」が風味を左右し、その個性の源となっているのです。
発酵は“香りの下絵”、長ければ良いわけではない
発酵はよく「香りの設計図」と呼ばれますが、長ければ長いほど良いというものではありません。カカオでもコーヒーでも、過発酵すると不快なにおいや雑味が生まれてしまうのです。大切なのは時間・温度・pHといった条件のバランスで、農家や焙煎士の工夫がここに詰まっています。つまり、微生物のリレーがうまく繋がるかどうかが、その豆の運命を決めると言っても過言ではありません。
焙煎で香りを“仕上げる”:火加減と時間がキャラクターを決める
マイラード反応が生む“ローストの香り”
コーヒーもカカオも、焙煎という最後の火入れで個性がぐっと際立ちます。豆の中に含まれる糖やアミノ酸が熱によって反応し、ナッツやトーストを思わせる香りが立ち上がるのです。これはマイラード反応と呼ばれる現象で、香りの主役となるピラジン類などが生まれます。発酵で描かれた“設計図”に、この焙煎という色づけが加わることで、飲み物やチョコレートとしての完成形に仕上がるのです。
ロースト度で変わる酸・甘み・苦み
焙煎度合いによって、味の表情は大きく変わります。コーヒーなら浅煎りは果実のような酸味が残り、深煎りになるにつれて甘みや苦みが前に出てきます。チョコレートでも同じで、焙煎が軽めなら明るい果実香やフローラルさが顔を出し、火を強くすればナッツやキャラメルを思わせる風味が強調されます。逆に火を入れすぎると、焦げや煙のような風味が強くなり、せっかくの豆の個性が平板になってしまうこともあるのです。
カカオの温度帯の考え方
カカオの焙煎はおおよそ90〜150℃前後のレンジで行われます。あまり低すぎると生っぽさが残り、高温で長時間焙煎すると苦みや渋みが目立ってしまいます。コーヒーも同じで、火加減や時間のわずかな違いが大きく味を左右します。たとえば浅めの焙煎で引き出される酸の輪郭は、コーヒーでは柑橘のような爽やかさ、カカオでは赤い果実を思わせる華やかさにつながります。つまり、火加減と時間の設計こそが風味のキャラクターを決める最後の仕上げなのです。
当店のこだわり|コーヒーも自家焙煎、カカオも自社焙煎
一貫製造だからこそ叶う“香りの濃密さ”
ジャラク コーヒー&カカオは、インドネシアから届いたカカオ豆を自社工房で焙煎し、チョコレートに仕上げる“Bean to Bar(一貫製造)”を行っています。カカオ豆の厳選から発酵、焙煎、チョコレートになるまでのすべての工程を同じ場所で手掛けることで、香りや風味を最大限に引き出す丁寧な作りが可能です。また、コーヒー豆もインドネシア産のものを自家焙煎し、淹れ方にもこだわりがあります。この両者を同じ品質管理のもとに扱えるのは、ジャラクならではの強みです。
香川県発の希少糖コラボで、素材の魅力を引き立てる
チョコレートには、地元香川県で生まれた希少糖や素焚糖といった自然由来の優しい甘みを加えています。添加物をできるだけ使わず、素材そのものの味わいを引き立てる作り方が、ジャラクのポリシーです。インドネシア産のフルーティーなカカオと、地元のやさしい甘さが出会うことで、口の中で香りがゆるやかに広がります。
店内と工房がつながる“見える化”が魅力
店舗は改装されたベーカリー跡地にあり、工房とカフェがガラス越しにつながった“見せる空間”としてデザインされています。お客様はショコラティエの手仕事を眺めながら、香りとともにチョコレートとコーヒーを楽しむことができます。まさに、五感で体験できる場として、特別なひとときを提供します。
おすすめ商品とギフト提案
商品ラインナップ
商品名 |
内容量 |
テイスティングノート |
価格 |
URL |
ジャラクガナッシュ(生チョコ) |
8個入り |
なめらか×濃厚カカオ |
¥1,960 |
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ボンボンショコラ 6個入り |
6個入り |
フルーツ×ナッツ×紅茶の個性派 |
¥2,760 |
それぞれの特徴
ジャラクガナッシュ(生チョコ)
ジャラクのBean to Barチョコレートを贅沢に使った、なめらかな口どけのガナッシュ。インドネシア産カカオ豆を丁寧に焙煎・精製し、そこに生クリームとバターを加えることで、リッチでやさしい味わいに仕上げています。手土産や贈り物にぴったりなサイズ感で、冷蔵で届くため、ひんやりとした食感も楽しめます。
ボンボンショコラ 6個入り
6つの異なる味が楽しめる、華やかな一粒チョコレートの詰め合わせ。ベリーの酸味が爽やかな【アムール】、沖縄の塩が香る【塩キャラメル】、香ばしい【アーモンドキャラメル】、人気の【ピスタチオ】など、色・香り・食感が一粒ずつ異なります。見た目にも美しいチョコレートは、特別なギフトにぴったり。インドネシア産カカオの奥深さと素材の妙が詰まった逸品です。
商品一覧を見る https://jalak-yumex.net/collections/chocolate
まとめ|香りの共通点を楽しむ一歩へ
コーヒー豆とカカオ豆は、遠く離れた存在に思えて、実はとても似た旅をたどっています。どちらも熱帯の気候で育ち、発酵で風味の設計図を描き、焙煎という火加減で個性を仕上げるという共通の道筋を持っています。そのため、私たちが一口飲んだり食べたりするたびに感じる香りや余韻には、驚くほどの重なりがあるのです。コーヒー好きならチョコに、チョコ好きならコーヒーに――片方の知識がもう片方をより深く楽しむきっかけになります。当店ではどちらも自家焙煎にこだわり、香りの魅力を日々探求しています。ぜひ次は、コーヒーとチョコを一緒に味わいながら、共通する世界を楽しんでみてください。
参考URL(情報源)
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SCA「Coffee Taster’s Flavor Wheel(WCR連携)」https://atlanticspecialtycoffee.com/wp-content/uploads/SCA_TasterWheel_English_8.5x11.pdf atlanticspecialtycoffee.com